伝統レシピ
桜沢里真のマクロビオティック伝統レシピ 第三十三回

かまくらに住居していたある日、書き物の手を休め、階下で洗濯をしていた私を見に来てうしろから「どぶがよく流れて有難いね」「すんだら用事があるから」といってまた二階に上がってしまいました。ほんとうの愛を知らぬ私は「どぶ」の水が流れるのはあたりまえと気にもせず、きれいになった洗濯ものを干しつつそれでもよく考えました。私は大変なことを教えられていたのです。この「どぶ」の水がつまったらどうなることでしょう。水があふれて家の中も台所も大洪水!
私は自分の身体のパイプのことを考えました。食道から胃腸、大腸、そして肛門、血管、血液、腎臓、肝臓、肺、心臓等、これもパイプではないか、これもどぶと同じではないか、これがつまるのが病気という洪水なのだと気がつき桜沢の一言がどんなに大切なことであったかを再び考えなおし、すばらしい教えを受けた幸福で胸を一杯にふくらませ、急いで二階にかけ上り、桜沢に申しますと、ニッコリ笑って「よかったね、そうなのだよ、お前はその”どぶ“をつまらせていたのだ、心も同じだよ!」「どぶのつまらないような料理を作るのがお前の仕事じゃないか」
何という幸せ、三十七、八年間もむだにした人生を取り返すため、一日一日と修養にむちうった私でした。そのおかげで病気はすっかり治り、大旅行におともが出来るようになったのでした。しかし、まだまだ死ぬまで修養と心得て、はげまねばなりません。
桜沢里真著「マクロビオティック料理」(日本CI協会※絶版)より原文引用
![]() 調理:室井 智江子(むろい ちえこ) |
![]() アシスタント |